甲斐駒ケ岳 (2,965m)      23.09.11~12

これは、7L1EZXさんから頂いたメールを転載したものです。

 1ヶ月半ぶりに、山に足を向けました。南アルプスの貴公子、甲斐駒ガ岳。三度目の正直です。昨年は前日にぎっくり腰、今年7月はは家庭事情で延期、結果的には天候の悪化で行かなくて正解だったのですが、今回やっと実現しました。
前日の午後に沢筋の仙水小屋に投宿し、翌朝3時起床、3時半朝食、4時には暗闇の中をヘッドライトの明かりで出発しました。途中の樹林帯の中でライトを消し、森の静けさを味わい、星の明るさに感激し、全身で自然を感じ取りました。
小一時間歩いて北沢峠にさしかかる頃、東の空がオレンジ色に染まり始め、ラッキ-にも尾根の高みで朝一番の太陽の光を迎えることができました。重なり合う雲海、山々の黒いシルエット、そして神々しい幾筋もの光の筋、小屋のご主人が教えてくれた通り、今日はいい日になりそうです。
登るにつれて徐々に視界が開けてきて、最初のピ-クである駒津峰に立つと、対岸に千丈ヶ岳、手前に鳳凰三山、三角錐の北岳を主峰とする南アルプスの峰々、南には富士山頂も顔を出しました。
駒津峰を最低鞍部まで下り、いよいよ本峰に挑みます。折角だからと直登コ-スを採りました。岩と岩の隙間を縫い、あるいは乗り越えて白亜の殿堂に向かいます。山頂直下に至り、いよいよ白い花崗岩のガレ場を踏みしめ踏みしめ一歩一歩、ついに2,965mの山頂に立ちました。
そこは見渡す限り360度の大展望、西に木曽駒・御岳・乗鞍の中央アルプス、北アの峰々や黒姫妙高、北に八ケ岳、南に富士山と名のある山々を手中に納めて眼下には伊那の町も広がっています。
十二分に景色を堪能した後、隣の摩利支天に降りたって陣を構え、ゆっくりと昼食をとりました。それにしてもアルプスは大きく高く山深く、やはり群馬の山とは違います。そうこうしているうちにいつの間にか盆地から雲があがってきて、周囲の山々を包み始めました。富士山も間もなく雲に隠れます。
いったん駒津峰までもどり、そこからハイマツの海を双子山方面経由で北沢峠に下りて今回の山行を終えました。
北沢峠-仙流荘間の専用バスでは行きも帰りも運転手さんのガイド付きで、左右の山や谷の説明から南アルプス林道の歴史、随所に見られる道路脇の高山植物や樹木の説明など、飽きることない楽しいひと時でした。
汗流しは、途中の高遠温泉「さくらの湯」です。「この近くにはいくつかこうした共同浴場はあるが、ここが一番だよ。」と湯船で一緒になった地元のおじいさんが教えてくれました。アルカリ性が強のか
とてもすべすべしていてよく温まり、上がってからもなかなか汗が引きませんでした。
目をつぶると紺碧の空に白い甲斐駒、緑に覆われた山麓から湧き上がる白い雲、それらを形成する雄大な南アルプスの山容に、「やっぱり山はいいなあ」と実感する今日この頃です。
デ-タ
                                     
登り    4:10
下り    4:05
休憩    2:30                    
合計  10:45     
DSC02037

DSC02073

DSC02088

DSC02091

DSC02095
甲斐駒エピソ-ド
双眼鏡の巻
 甲斐駒への直登ル-トを登っている時に、腰のバッグに入れておいた双眼鏡がないのに気がつきました。景色を見た後にきちんとバッグに入れなかったのか、それとも途中で落としてしまったのか、今更捜しにもどる精神的肉体的余裕はありません。
仕方がないなと思いつつも諦めきれず、山頂でしばらく休んでから登山者に呼びかけました。「どなたか双眼鏡が落ちているのに気がつかれた方はいらっしゃいませんでしょうか。」と。
すると驚いたことに、「あっ、駒津峰にあったので、標柱の上に置いてきました。」と言ってくれる人が居るじゃあありませんか。もう私は感激して、「ありがとうございました。ありがとうございました。」と何度も何度も頭を下げてお礼を言ってしまいました。やはり山には悪人はおりません。
しかし戻りながら、「世知辛いこの現在、誰かが持って行ってしまったのではないだろうか」と心配でした。落としてからすでに3時間近く経っているのですから。
そうしてようやく駒津峰にたどり着いてみると、やはり標柱の上はおろかどこにもそれらしきものは見あたりませんでした。「そうだよな、あるわけないよな」なんて自分自身に言い聞かせながら、でも「まだ下のバス停でも聞けるチャンスは残っている」と心の中でつぶやき、バスの出発前に下山できればと一縷の望みをかけて下りていきました。
ようやく着いてバスを待っている人たちに聞いてみると、首を横に振るばかりでした。そこでそばのホテルの事務所にでも届いているかと小走りに歩いて行きました。すると入り口のベンチで休んでいた人が「双眼鏡、ありましたか?」と聞いてきました。見ると山頂で出会った、例の双眼鏡を標柱の上に置いておいたと言ってくれた人でした。「いや-、なかったんですよ。」と応じると、「そうですか。」と一緒にがっかりしてくれました。すると背後から、「双眼鏡ですか、置いてあったので持ってきて、いま事務所に届けようと思ったところです。」と言う声がします。振り返ると、ひとりの女性が自分のザックからゴソゴソと取り出そうとしているところでした。お-っ、それはまさしく私のあの懐かしの、モスグリ-ンの双眼鏡です。なんとナント人から人へ伝わって、いま目の前にあるではありませんか。もううれしくって嬉しくって、地獄に仏とはまさにこのこと、世の中捨てたもんじゃあないなと感謝感激、また明日から生きる勇気が思いっきり湧いてきました。
こんな事を書いている今頃になって、この方達に感謝の気持ちだけでなんのお礼もしなかったなと、ちょぴり反省の私です。

仙水小屋の巻
 
 北沢峠から沢沿いに小一時間登ったところに仙水小屋という山小屋があります。今回の甲斐駒登山で一晩お世話になった所ですが、いろいろな面でとても感心させられました。
まずは山小屋でありながら完全予約制です。登山者にゆっくり身体を休めてもらおうと無理な詰め込みはせず、一人分のスペースをしっかり畳1畳分確保し、寒くないよう布団も毛布も余裕のあるものでした。
また食事も山小屋とは思えないほどの品数で、しかも美味しかったです。それでいて料金はアルプス中一番の低廉価です。さらに驚いたことには蝿が一匹もいません。蝿の発生源となる残飯や糞尿はすべて下界に降ろして処理しているとのことでした。だから外でもゆっくり食事を楽しむことができるのでしょう。
飲料水はきれいな清水を使い、電気は沢の水を利用した自家製の水力発電とソーラーシステムでまかない、連絡はアマチュア無線での交信という見事なエコ生活です。
飾らないご主人の話しぶりも山屋らしい雰囲気があり、営利とはかけ離れた素朴さが気に入りました。棚には山の雑誌や関係書籍、いまはやりの連載マンガ「岳」も並んでおりました。

仙水小屋

これは、7L1EZXさんから頂いたメールを転載したものです。

カテゴリー: 7L1EZX, 山 ハイキング パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です