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二子山


10月13日(日)、群馬県境に近い埼玉県の二子山に向かいました。
 西上州の山は、上越方面に比べて縁遠く、なかなか足が向きません。秋本番の紅葉に包まれた岩場をイメ−ジしての初挑戦です。

 全行程4時間余りの山なので、太田を6時過ぎに出発、尾島の関根さん宅により、2名で6時半に出発しました。
 まだ目覚めていない町を通り抜け、すいている横道を快適に走り抜けて、神流湖沿いの国道462号線、通称十国峠街道を一路西に向かいました。

 中里村で左折して299号線に入り、左手に恐竜の足跡を見、「登人」という民宿の手前をちょっと入った所に登山口がありました。時刻は8時半、すでに10台ほどの車が停まっていました。

 9時、沢沿いの道を歩きはじめ、やがて勾配のきつい杉林を登っていきます。標識や目印は親切すぎるほど付いていて、迷う心配はほとんどありません。スロ−ペ−スの我々を、家族連れや夫婦者などの数組が追い越していきました。50分ほどかかって、やっと股峠という鞍部に出ました。

 ここから右の東岳を目指します、少し行くと淡い紫色のトリカブトが数本咲いていました。そのあたりから岩が出始めました。ホ−ルドとスタンスはしっかりしているものの、下が切れ落ちていて震えます。そこを登ると、さらに不安定な場所に出て、6ミリ程度の古いロ−プが5メ−トルほど下がっているのみです。命を託すにはあまりにもおそまつです。しかたなく岩をつたって何とかクリア−したものの、その先は狭く、ル−トの目印も見えません。この先どんなところに出るか心配です。仮に登りきれたとしても、降りられるかが問題で、動けなくなったらどうしようもありません。今いる位置でさえ、ふるえている状態です。安全第一で退散することにしました。

 でも今の場所から、安全に降りられるのか、急に恐怖が襲ってきました。運悪く、そこまで行くと展望が開けて、対岸の西岳が見えます。それは見るだけで背中がぞくぞくし、手足がわなわなする垂直の壁です。怖れが拡大しました。
 慎重に、慎重に足を運び、何とか無事に降りきって、もとの股峠にもどりました。長い時間に感じましたが、もどってみると、たったの30分しかかかっていませんでした。

 西岳へは、上級者向けの直登ル−トと一般向けの迂回ル−トがあります。登る気は毛頭ありませんが、直登ル−トを見てみたいと思い、気にかけながら登っていきましたが、だいぶ進んでしまって、結局わからずじまいでした。
 峠から30分の歩くと、岩が出てきて傾斜も急にきつくなり、稜線が近いようです。ここまで来てやっと紅葉らしき色に気がつきました。その下は、まったくの夏色の木々でした。この辺りの山々は標高もそれ程高くなく、位置も南にあるせいか、あと一ヶ月は有に山登りが楽しめそうです。

 最後の岩をよじ登って、ようやく稜線の一角に出ました。それは切り立った狭い岩陵帯で西に長く延びています。恐竜の背中のようでもあります。そこに我々は立ちました。雲一つない青空に360度の展望、山々が近く遠く望めます。やわらかな山並みです。

 折角と思い左側のちょっとした高みに登り、しばらくは景色に見とれ、気持ちよさに浸りました。西を見ると一直線上にいくつかのピ−クが連なり、そのうちの一つが西岳山頂でしょう、標識のそばに数人の登山者が見えました。
 この山の岩質は、柔らかい部分と堅い部分が混ざり合っているのでしょう。部分的に風化浸食されて、穴が空いていたり、たくさんの隙間ができていたりしています。尖っていて登るのには好都合ですが、その上を歩くのは危なっかしいし、素手で持つと痛いほどです。そんな岩が白く、西にずっと延びて尾根を形成しています。それが色づいた葉と重なり合って、なかなかのコントラストを見せていました。

 写真を撮ったりしながら、のんびりと尾根の端から端までおよそ1時間、空中散歩を楽しみました。
 尾根が切れ落ちるあたりで、ゆっくりと昼食を採りました。と言っても平らなところがないので、体を斜めにしながらです。ついでに昼寝もと思いましたが、秋の陽が暑く眩しすぎました。今思うと、よくあんな不安定な場所でちょこちょこと動き回っていたなと、体が震えます。バランスを崩したら、真っ逆様に落ちてしまうのに。クワバラ、クワバラ。

 13時45分、下山開始。6メ−トルのくさり場を降りると、杉林の道となります。30分あまりくだると、二子山を振り返り見る、送電線の鉄塔の下に着きました。さっきまであんな高い所にいたのか、と思うぐらいの高い峰です。山頂付近が垂直の露岩になっているせいで、よけいに高度感を感じるのでしょう。

 そこからさらにゆるやかな樹林帯を40分歩いて、3時ちょうどに国道に出ました。この下りは、本当にゆっくりゆっくりと整理運動をしているような気持ちで歩きました。

 そこから15分、もとの駐車場にたどり着きます。その間、行く時には気がつかなかったのですが、道路からは二子山の高みがより一層そびえて見え、よくあんな高いところまで登れたなあと、あらためて思いました。

 帰路も渋滞なく、6時前に帰り着きました。秋の日の静かな静かな山行でありました。



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